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シンデレラとその他の教訓



12時を告げる鐘が鳴った。

あの婆さんから言われていたとおり、12時を過ぎた瞬間、シンデレラの衣装はいつものボロボロなものに戻った。

「あのババア、余計な制約加えやがって」と思い、シンデレラは舌打ちをした。
「あと一歩で王子を落とし、玉の輿だったのに」苛立ちを抑えきれず、今度は声に出していった。

しかしシンデレラは顔が緩むのを抑えられなかった。高鳴る胸の鼓動を感じた。


11時55分。
約束の時間が差し迫り、王子に自分の正体を知れらてしまうことを恐れたシンデレラは、咄嗟にその場から走り出してしまった。
自分のことを美しい淑女だと信じている王子に、みすぼらしい姿をさらしたくなかったのだ。
しかし走って逃げながら、彼女はことの重大さに気がついてしまった。

「自分の素性を明かさなければ、王子との関係もここまでになるのではないか」
「このままでは王子とは二度と会うことも話をすることも、ダンスを踊ることもできないではないか」
そんな考えが頭の中をぐるぐるとめぐった。

その中、転んだふりをしてあのガラスの靴を残してきたのは一つの賭けだった。

ガラスでできた靴など世界中探したってそんなには存在しないだろう。
もしかするとあれを手懸りに王子が自分を探しだしてくれるかもしれない。
シンデレラはそこに一縷の望みを賭けたのだった。

一度だけ振り向いたとき、シンデレラは王子が靴を拾い上げるのを確認していた。
それが唯一の希望だった。

王子はいつかわたしを見つけ出してくれるだろうか。
彼はこの辛い生活からわたしを救い出してくれるだろうか。
わたしは王妃になれるだろうか。

このようなくさぐさの思いがめぐり、シンデレラの顔は思わず緩んだ。
胸の高鳴りを抑えることができなかった。
生まれて初めて感じる、暖かい気持ちだった。

そのたった一つの気持ちを手のひらの上で転がし、月明かりに透かしてみてから、彼女は思った。

――あるいはこの思いだけでも、わたしは明日を生きていけるかもしれない。



教訓:人間は例外なく、狡猾で美しい。



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