
赤ずきんちゃんとその他の教訓
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「おばあちゃん、おばあちゃん。」
「なんだい、赤ずきん。」
「どうしておばあちゃんのお耳はそんなに大きいの?」
「…」
「…」
「……」
「……」
「………」
「ごめんなさい。気にしているとは思わなかったから…」
教訓:人の気にしていることは言ってはいけない
A
「おばあちゃん、おばあちゃん。」
「なんだい、赤ずきん。」
「どうしておばあちゃんはそんなに毛深いの?」
「…」
「…」
「……」
「……」
「………」
「いや、あの毛深といっても許容の範囲内というか、それほどでもないよ。ほんと。なんかよくあるレベルの、というか」
「…………そ。」
教訓:悪意よりも表面上の優しさのほうがはるかに人を傷つける
B
「おばあちゃん、おばあちゃん。」
「なんだい、赤ずきん。」
「どうしておばあちゃんのお口はそんなに大きいの?」
「…」
「…」
「……」
「……」
――この子は知らない。世界中の人間の口がこのような形をしていることを。生まれたときからサナトリウムで育ち、外の世界との接点を欠いてしまった。この子にとって、世界とはサナトリウムの内側と自分自身だけなのだ。だからせめて彼女には、彼女から見えている世界を信じさせてあげたい。だからだめ。泣いてはだめよ。早く返事をしてあげなければ――
教訓:やさしい嘘はついてもいい
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