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赤ずきんちゃんとその他の教訓



@

「おばあちゃん、おばあちゃん。」

「なんだい、赤ずきん。」

「どうしておばあちゃんのお耳はそんなに大きいの?」

「…」

「…」

「……」

「……」

「………」

「ごめんなさい。気にしているとは思わなかったから…」



教訓:人の気にしていることは言ってはいけない



A

「おばあちゃん、おばあちゃん。」

「なんだい、赤ずきん。」

「どうしておばあちゃんはそんなに毛深いの?」

「…」

「…」

「……」

「……」

「………」

「いや、あの毛深といっても許容の範囲内というか、それほどでもないよ。ほんと。なんかよくあるレベルの、というか」

「…………そ。」



教訓:悪意よりも表面上の優しさのほうがはるかに人を傷つける



B

「おばあちゃん、おばあちゃん。」

「なんだい、赤ずきん。」

「どうしておばあちゃんのお口はそんなに大きいの?」

「…」

「…」

「……」

「……」

――この子は知らない。世界中の人間の口がこのような形をしていることを。生まれたときからサナトリウムで育ち、外の世界との接点を欠いてしまった。この子にとって、世界とはサナトリウムの内側と自分自身だけなのだ。だからせめて彼女には、彼女から見えている世界を信じさせてあげたい。だからだめ。泣いてはだめよ。早く返事をしてあげなければ――



教訓:やさしい嘘はついてもいい



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