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シメジ・ジェネレーション



「どうせ僕はシメジなんです」

 また始まったな、と思った。
 正直俺はこいつのシメジコンプレックスにはうんざりしていた。

 後輩のこいつから相談ごとをされた最初のうちは、俺もこいつの話しを真剣に聞いていたのだ。
 だが、その後何度相談に乗ってやっても、必ずこいつは決まって同じ結論に達した。

「どうせ俺はシメジなんだ」

 もっと具合が悪いときには、エノキ、マイタケなどに対して侮蔑的な言葉を発しさえした。
 そんなやつの姿勢に接するにつれ、あまりにも卑屈だ、と思うようになった。

 たしかにこいつらの世代が「シメジ」と呼ばれているのは気の毒ではある。
 そもそもそれはこいつら自身に問題があったのではなく、むしろ国の失策に原因があるのだから。
 むしろシメジたちは被害者なのだ。

 しかし、と俺は思う。
 しかしだからといってそれを逃げ口上にするのはいかんのじゃないか。

「お前な、シメジシメジってそんなに卑屈になるもんじゃないぞ」
「どうしてですか。僕らがなかなか発芽できないのはシメジだからじゃないですか」
「しかしなあ、それを言い訳にしちゃいかん」
「なんでですか。僕らのことを『シメジ世代』なんて呼んで差別しているのは僕らじゃないでしょ?むしろあんたらでしょ?僕らはそうやって上からも下からもバカにされているんだ」
「そうかもしれない。だけどな、考えてみろよ。シメジにだってうまいこと発芽するやつらもいるわけじゃないか」
「つまり、なにがいいたいんですか?」
「シメジだって、エノキともマイタケともかわらん。できるやつはできるってことだよ」

 この言葉を聞くと、奴はきっと俺を睨みつけ、すて台詞をはいて席をたった。
「あんたに、マツタケ時代を謳歌したあんたになにがわかるんだ!」

 その言葉は正直耳に痛い。
 俺はなんとなく尻の座りが悪くなって、苦々しい気持ちでグラスの中のシイタケをすすった。


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