
あなたの物語
 今から私は、あなたのことについて書く。
 この物語はあなたの物語だ。
 とはいえ、多くの人にとってはどうでもいい物語でもある。
 というのもこの物語は、何万分の一の確立で選ばれた、その人のために書かれるのだから。
 そう、この物語は、選ばれた「あなた」のために書かれているのだ。
 内容は、あなたのあらゆる日常の全て――
 すなわち、朝起きてまず何をして、何時に何を食べて、といった日々のルーティンから、女性関係、性的趣向、性癖といった部分まで、事細かに記すつもりだ。
 しかしだからといって悲観しないでいただきたい。
 あなたにとって、私事を明るみにされるのは一大事かもしれないが、他の多くの人にとって、それはどうでもいいことだからだ。
 それはくだらないテレビ番組のように、さらさらと人の記憶から流れていってしまうはずだ。
 では、あなたの物語を始めよう。
 あなたです。
 山内大介さん、あなたのことですよ。
次の話を読む