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いい人・悪い人



俺はどうやら人に好かれるタチらしい。
その証拠に、俺を知る人はたいてい俺のことを「いい人」と思うらしいのだ。
少なくとも俺のことを「悪い人」だと評する人を、俺は一度も見たことがない。
俺は俺らしく、ただ自分流で生きているだけなのだが、なぜか人は俺をそう評価する。
俺の器の大きさゆえのものなのか。
こういうのを俗に「人望が厚い」というのだろう。

――――――

「あの人ほんと、キモイよな」
「分かる分かる。それにすげぇ自己中だよな」
「そうそう。しかも一見いい人そうな顔して、実は陰険なのね」
「顔が悪い上に性格も悪いってね」
「ははは。それ的確にあの人を言い表してるよ」
「同じシフトに入ったときなんか最悪」
「愚痴ばっか言ってるでしょう」
「そうなんだよ。まじであの人とは極力つるみたくねぇよな」
「ほんっと、そうだよ」
「…」
「…」
「まあでも、悪い人…じゃないんだけどね」
「うんまあ、悪い人…ではないよね」

――――――

「でその人ってどんな人なの?」
「そうねえ…困った。そういわれるとあの人って特にこれといってないのよねぇ。背は…高くないし、顔も…普通…いや、あの顔で『普通』は褒めすぎかな。そいで学歴も中の中だし…性格も結構陰険なとこあるんだよなぁ。でもまあ強いて言えば、悪い人…ではないよなぁ。そっかぁ。悪い人じゃない…ということは。よぉし、ならば…いい人よ。」

――――――

「いい人」か…。
まあ実際のところ、俺って度量が大きいもんな。

ふっ。

ふふふふふ。


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