感動的なシーン
「さよならだね」
僕らはお互いの顔をみつめあって、二人の最後を確かめ合った。
そのとき僕らの間を一陣の風が吹いて、彼女のマフラーをさらっていった。
それはまるで、さっき告げられた二人のさよならを投影しているみたいだった。
僕はぼんやりと、舞い上がったマフラーの行方を追った。
マフラーは風にのって空高く舞い上がり、上空でくるくると回転した――
かと思ったら逆風にあおられて急降下。
そこを偶然通りすがったバイクのヘルメットに巻きつき、視界を失ったバイクは横転。
バイクはそのままするすると横滑りし、10メートルほど先で制止すると、ポンとこ気味よい音をたてて炎上、爆発した。
そのあまりのテンポのよさに、周囲から拍手が起きた。
彼女も呆けた顔をして拍手していた。
念のために僕も拍手をしておいた。
曲芸師の身軽さで奇跡的に無傷だったライダーは、メットを脱いで、紳士のポーズでそれに答えていた。
拍手の雨が包む。
スタンディングオベーション。
それは一見すると、まるで感動的なシーンのようで馬鹿みたいだった。
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