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幸せな人
今、通りをトボトボと歩いているのが、この物語の主人公である。
もっとも、トボトボと歩いてはいるが、何か悪いことが起きたというわけではない。
いうなれば、彼のさえない人生そのものが歩き方として表れているのだ。
この辺りの描写に、わたくし、筆者の巧みな表現力が否が応にも見出されてしまう。
私が文鬼と呼ばれる所以である。お恥ずかしい。
さて、主人公の彼はさえない人なりの悩みというものを抱えていた。
その悩みというのは他者にとっては取るに足らぬものではあったが、当の本人にとっては彼の人間性の根幹を揺るがすほどの悩みだった。
このくだりで、わたくし筆者は、実存的な問題を本作品に持ち込もうとしている。
通常の筆者であれば往々にして見逃してしまう、深遠なテーマである。
知性は抑えようと苦心しても思わず顔を出してしまうものだ。
我ながら恐ろしい博識。にくい。
また、主人公の彼は容姿の上でもさえない。
さえない性格も手伝ってか、思春期以降は女子から全く相手にされず、ろくに会話した経験もない。
その点、筆者であるわたくしの容姿は端麗だよ。
街を歩けば女性に振り向かれることもしばしばで、また、女性のほうから積極的にアプローチをかけてくることもしばしばなのだ。
そして主人公のさえない彼は…
いや、もうさえない男の話はいいから、素晴らしき私の話をしよう。
私は昭和57年、九州のとある町に生まれた。
幼い頃から容姿端麗、頭脳明晰と近所で評判で…
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