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人類が消えた日
タイムマシンによる調査で100年後の未来を見てきた科学者二人が、「今」に帰ってきた。
喝采を受けた彼らであったが、その表情は一様に暗かった。
二人は世界へ向けて、彼らの見てきた未来の様子を語った。
そして彼らの以下の発言が、世界中の人間を震撼させたのだった――
「100年後の地上には、人間が、一人もいなかった…」
この二人の科学者の言によると、世界各地を調査したが人間の生体反応が全くなかったのだという。
つまりどうやらこの100年のうちに、人類は何らかの理由で地上から姿を消してしまうことになるらしいのだった。
しかし、建物等が破壊された形跡がないことから、戦争、あるいは巨大な天災によってそれが引き起こされたとは考え難いのだという。
さらにウイルス等の内的要因の調査も行ってはみたものの、人類が絶滅するに足る量の遺体が発見されず、その線も考えられないのだという。
つまり今回の彼らの調査では、不明な何かしらの要因によって今から100年のうちに人類は確実に地上から姿を消す、という事実が明らかとなったのだ。
この原因不明な人類消滅の情報は、世界を恐怖に陥れた。
原因さえ把握できれば、まだ手の施しようがあった。何か対策のしようがあったはずなのだ。
しかし今回のケースでは「人類消滅」という恐ろしい結果だけが明らかとなっただけで、肝心のその原因が分からなかった。
つまり、その知らせを受けた人類にとって、「人類消滅」とは回避し得ない究極の終末だったのだ。
それゆえこの恐怖は狂気を呼ぶほどの恐怖となり、人々はパニックに陥った。
やがてそのパニックは、それ自体終末的とでもいうべき規模の混乱を招いた。
もはや事態は収拾がつかず、人類はこのままいつ訪れるとも知れない「その日」をただ呆然と待つしかないように思われた。
しかし人類には、この窮地を打開する策が一つだけ残されていた。
二人の科学者の発表を受けてまもなく、各国総出で巨大な建造物が作り上げられた。
それは世界中の人間が乗り込めるほどの、大きな大きなタイムマシンだった。
人類に残された策とは、原因や結果を<超越>する、という策だったのだ。
そしてある日、その巨大なタイムマシンは、地球上の全ての人間を乗せて、時空を超えた旅へと出かけた。
――101年後の未来を目指して。
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