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遠足
2時。
通りのほうから聞こえてくる物音に気づき、私は外を眺めた。
その物音の正体は、ちょうど私の部屋の前を通過している子どもたちの行列だった。
遠足の帰りなのだろうか。
悪戯したりじゃれあったりしながら、皆楽しそうに列を成している。
私は決して子どもが好きな方ではないが、あのように勝手気ままな子どもたちの様子を見ていると、自然と頬がほころび優しい気持ちになってくる。
よくよく考えてみると、私も今年で25歳だ。もう子どもがいたっておかしくはない年である。
これまであまり意識したことはなかったが、もしかすると私の本能的なものが家庭を欲しているのかもしれない。
「子どもかぁ」
私は呟きながらも、その前に結婚すらしていないことを思い出し、自分の気の早さに少し笑ってしまった。
普段は静かな私の部屋に、子どもたちの賑やかな声が響く。
2時15分。
遠足なものか。
子どもたちの喧騒が未だ大きく鳴り響く中、私は震えていた。
こんな夜中に遠足などあるはずがない。
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