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違和感



先ほどから彼はどうも釈然とせぬといった表情でこの部屋をうろつき回っている。

時に思いついたかのように棚をあさり、また机上の筆記具、散乱した雑誌等を眺めながら「うぅむ」と唸り声を上げているのだ。

一体何に当惑しておるのか、と興味深く眺めておったら、「どうも違和感が」などとブツブツ呟いているので、どうやら何かに対し不自然さを感じているようなのである。

私の知る限り、彼は決して神経質な者ではない。いやむしろずぼらといった表現が相応しいと言えよう。

そのような彼がかくもこの部屋に違和を唱えているのだから、よほど不自然な変化を感知しておるのだろう。

あいも変わらず部屋中のあらゆる物を眺めては「うぅむ違和感が・・・」といったことを呟いている彼に、私は問うた。

「君、先ほどから一体何をやっているんだい?」

その声にあからさまに、驚いた、といった表情で彼は私を見た。

「いや、あの、なんかさあ、いろいろよ。うん。」

と、明らかに当惑している。もしや私がここにいることにさえ気づいていなかったのか。

そしてまたしばらく物色を続けた後、ようやく我を取り戻したのか彼は問うた。

「あの、君、いつからここにいたの?」

「ああ、君が来るずっと前からだよ。」

「あ、そう、あの、何か物動かしたりした?」

「いや、何もしてないけどねえ。」

と答える私を訝しげに見ながらも、やはり彼は一連の作業を続ける。

とここまできて、ようやく事態が飲み込めた私は呆れつつも言った。



「ところで君、君の部屋は隣だよ。」



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