ちと反ショートショート−どこからか飛んできてメニューが表示されていない人はここをクリック

1メートル



「たった1mでだぜ?」

彼は口角泡を飛ばしながら言った。

「我々はたった1mの違いで生きているのだよ!」

彼はこうなると長い。かれこれ30分以上も、同じ言葉ばかり繰り返している。

「わかるだろ?君。」

もうすでに何度もこの問いかけに頷いてきた。

「つまりこの道路をご覧よ。我々の歩くすぐ側をだねえ!鉄の塊が凄い早さで行き交っているのだよ。」

そうだねえ、僕はそう頷く他になかった。

「もし僕が、このたった1m向こうにいたとしたらどうだい?!」

僕はこの退屈に耐え切れず、理解を装うふりをしながら、ぼんやりと彼の方を向いていた。

「わかるだろ?たった1mのズレで、僕たちは生きているんだ!」



そのとき彼の後ろで大きな音がした。



「わずか1mでだねえ・・・」



そう1mだ。

そのわずか1mの誤差によって、彼は生き延びることになるのである。



スリップしたバイクは2m・・・





今まさに、僕の立っているこの場所へ、一直線に向かっているのだから。



次の話を読む