⑩ロードトゥ大宰府

ちと反珍道中（旅行記）－どこからか飛んできてメニューが表示されていない人はここをクリック

⑩ロードトゥ大宰府

「歩道橋が見えたら、そこからはそう遠くないんよね」

ａｋｋｋｙのやつが痛めた足を引きずりながらそう言った。

この旅の間、何度か『あと少し』という言葉を使ってきたが、これほど現実味のあるのは初めてだった。

旅の間、何度か全国チェーンの弁当屋の前を通過した。宣伝用ポスターには優香が映っていた。彼女は我々がその弁当屋を通過するたびに優しく暖かい眼差しを送りつづけた。

ああ・・・優香・・・

ああ・・・優香・・・

ああ・・・・・・優香・・・

７月４日　ＰＭ　２：？？

いよいよ大宰府天満宮なる標識が・・・
ようやく『負けないで』ポイント

その歩道橋がとうとう見えた。

付近にある標識にはこうある。

『大宰府天満宮　３ｋｍ』

３ｋｍ！！？？あとたった３ｋｍで着くのか！！？？

これはもう着いたも同然である。これまでの道のりを思うと、３ｋｍという距離の如何に微々たるものか。

いよいよフィナーレだ、と誰もが思った。

しかし、結果から言うと、この標識ははっきり言って嘘である。さもなくば我々は狐か狸に化かされて同じ道をグルグル回っていたに違いない。

とにかくもう、ここからが長かった・・・・

驚く無かれ
大宰府の某中学校の校門

歩道橋から左に曲がった辺りで、休憩には丁度良いバス停があった。

akkky　「おい、ちょっとここで休憩していこうぜ」

足を痛めたａｋｋｋｙの悲痛の叫びであった。

それにあと３ｋｍ（と標識にはある）という距離をこのままノンストップで突き進むには、弱冠無理があり、この辺りで一休憩入れておくのが無難であると考えられる。

しかし無情にも我々はそれを無視し、歩みを止めることはなかった。

akkky　「お・・・おい・・・ちょっと・・・」

Ｋ＆ron　「・・・・」

無視した確固たる理由は各々あった。

この旅で最も長距離を移動してきたron氏は、兎にも角にもさっさとゴールしてしまいたいという焦りと、また雨が降り始めたらたまらんという危機感があった。

最も短距離しか移動していない私にも鬼気迫る思いがあった。

「一刻も早く放尿しないと大変なことになる・・・」

そう、トイレを探していたのだ。

『さっさとゴールしたい』『一刻も早く放尿したい』：『休憩したい』

かくして厳然たる民主主義の元の多数決は暗黙の内に行われ、マイノリティの発言は『無かったもの』とされたのである。

ａｋｋｋｙ・・・あん時はスマンかった。

私の尿意脱出に関して言うと、道の対面にコンビニが数件あったため、実はチャンスが幾度かあったのである。

しかし何故かそこに立ち寄ることはなかった。

当時の心境としては、「行き交う車をかわしながら、道の向こうまでわざわざ歩いた上に、店員に『トイレ貸してください』と頭を下げる元気なんざ残されてねえ。いっそのこと漏らしちまえ」といったところだろうか。

それくらい疲れは限界であったし、一歩でも歩数は減らしたかったのだ。

我々の進む先にトイレがあることをひたすら願うばかりであったが、不幸にもその願いは何にも届かなかった模様である。

ひぃ～

とにかく大宰府の町は景色が最高だった。

奇しくもこれまで我々を翻弄してきた雨雲が、この景色をいっそう美しいものとしていたと言える。

道に隣接した広場のようなところ
青年達がサッカーをしていた

野原
癒しのスペースとはこのような風景を指すのだろう

我々の向かう左手側には常に人為的な自然が続いた。人間が見ていて最も落ち着く、安らぐ間隔で緑が広がる。

奥に見える山には雲がかかった。その景色の何と幻想的たるや。

我々は黙々と歩いた。

重い足を一歩一歩進めた。

進めど進めどそれらしき景色は見えぬ。

されどこの一歩を進めれば、その分前へ進むのだ。

ａｋｋｋｙは足を引きずり、ron氏は叉ズレをかばい、そして私は尿意を抑え、ずりずり、のしのし、せかせかと、我々はその重い足を一歩一歩、前に進めた。

⑪大宰府でポンへ