⑤乙女心と飛行場

ちと反珍道中（旅行記）－どこからか飛んできてメニューが表示されていない人はここをクリック

⑤乙女心と飛行場

7月4日　ＡＭ１０：２０

二叉瀬にて休憩がてら近くを飛ぶ飛行機や、飛行物体などを撮影して（④参照）、再び空港を目指す。

さあ行こう！！と勇むron氏とＫさん。と、その2人の出足を挫かんと言わんばかりにａｋｋｋｙのヤツがちんたらジュースを買っている。

この野郎！ジュースは休憩時間に買えと小学校で習わなかったか？

などと考えていると無性に悪戯心が沸き、ａｋｋｋｙはひとまず置いて行くことに。

Ｋ　「ねえronさん。ａｋｋｋｙのヤツうちらに追いついて第一声なんだと思います？」

ron　「あ～とりあえずさっきから足痛がってるんで、そのことを訴えるんじゃないかなあ」

Ｋ　「そっすか～じゃあ俺はハニカミながら『てめえこの野郎』にかけよっと」

まあこんなこと別にとりとめて書くようなことではないが、あの時我々がこんな賭けをしていたことをａｋｋｋｙは知る由もない。きっとａｋｋｋｙはこのテキストを読みながらパソコンの前で「ほう」と呟いていることだろう。そうじゃないかい？

結局のところａｋｋｋｙのヤツは足を引きずって見せ、「痛いよ～」と言いながらやってくる。ちっ、賭けはronさんの勝ちか・・・。ronさん、さすがの推理力・・・ってしょうもないな～・・・。

とまあこんな雰囲気で我々は実に幸先がいいのか悪いのかよく分からん再スタートを切った。

～～～～ピーンポーンパーンポーン♪～～～～

『大宰府でポン』テキスト化計画実行委員よりお知らせです。

ここで皆さんに悲しいお知らせがあります。このテキストを更新しているＫさんが、ストーリーのこの時点での外的情報の大方、ならびにメンバーと交わした言語情報を著しく喪失しております。まことに申し訳ありませんが、読者の皆様にはこのことをご了承いただき、その上で引き続きテキストをご堪能下さい。以上『大宰府でポン』テキスト化計画実行委員からのお知らせでした。

～～～～ピーンポーンパーンポーン♪～～～～

と実行委員も申しておるように、このあたりから空港が見えるまでの間の、会話や風景といった記憶をほとんど失ってしまった。

なぜこのような事態が起きてしまったかというと、実はあの時私はあるものに夢中になってしまったからなのである。

「あ～～！！見て見て！！おたまじゃくし！！！懐かしい！！！」

「あ～～！！見て見て！！サカナ！！こんなちっさい川なのに魚が泳いどる！！」

「うわ～～～！！！川辺に鳥が！！すっげぇぇぇ！！」

「うおぉぉぉ！！ウシガエル！！！でっけえええ！！！」

「うひゃ～～！！！」

「うお～・・・」

・・・・

そう、小川や田んぼに生息する生物の虜になってしまったのであった。

そのはまり具合の凄さ故、会話や景色などは筒状となった私の目、耳を素通りしていたのかもしれない。とにかくテキスト化に当たって最も恐れていた事態である。

これから大宰府へ行く間、私は大きめの溝や田んぼを見つけるたびにそこを覗き込み、「ああ！！・・」と逐一２人に報告し、ほとほとあきれ果てた顔をされるのだが、その辺は繰り返しになるため今後割愛させていただく。

しかし、よくよく考えてみると、前章の「飛行機で大はしゃぎ」しかり、この水辺の生物への異常なまでの興奮しかり・・・これらは我々の人格と言うものが徐々に真っ白な状態へと帰っているように見受けられる。

ron氏の「ロードトゥ大宰府」まとめテキストにて同じことが書いてあったが、あらゆる人間の行動エネルギーは性的快楽を追求する心的エネルギー、『リビドー』によってもたらされる、とフロイトは提唱したそうである。

では果たしてさきほどの一連の興奮の要因は何であったかを見ると、そこにエロリビドーからくるモンモンたる興奮はない。

『近くを飛ぶ飛行機』『水辺の生物』この両者に私（我々）が抱いたものは、「好奇心」ただそれだけである。

それはまるで、転がるボールを追いかけずにはいられない猫、あるいはフリスビーを加えずにはいられない犬、のようなもので、所謂プリミティブな感情である。

つまり我々はこの『歩きつづける』という行為によって、徐々に「大人らしさ」「恥じ」「プライド」といった年をとるにつれて身についた一種のしがらみを脱ぎ捨てていったのではないか、と考えることができるのである。

このプリミティブな感情は、空港付近に着いたとき辺りから、さらに我々のタガを外し始めた。

ron 「あっはっはっはっは！！！く・・・空港見えましたよ！！っはっはっは！！！」

突如として笑い始めるronさん。

それに連られるように、

Ｋ　「ひゃっひゃっ！！！ほんとだ！！！っはっはっは！！」

と笑いが止まらなくなるＫ。

そして、

ａｋｋｋｙ　「あ・・・足がいてぇ・・・・！！」

と空気が読めないａｋｋｋｙ・・・

なおもこの状態は続く・・・

ron　「はっははははは！！！痛いっちゅうよりむしろ痒い！！」

Ｋ「はははは！！！確かに痒い！！！はははは！！！」

全員　「っはっはっはっはっはっは！！」

・・・・

もはやこの姿に、我々が普段見せている、対女性用の「気取った」「作った」自分を見つけることは出来ない。

ＡＭ１１：００

そんなぎりぎりの状態で、おかしな３人はようやく福岡空港に到着したのであった。

爆笑しながらもやっとのこと飛行場
途中参加の私もさすがに辛くなってきた

空港内に入った我々は疲れ果てた体を休めるべく、ほてほてと休憩所へ向かった。

さすがは空港。休憩するにはこの上ない場所だと思った。

売店はあるし、空調もきいて涼しい。

ただ一つ問題なのは、この空港を利用する人々は一人残らず、余所行きの豪華な恰好をしているということである。

誰一人として我々のようなみすぼらしい、陳腐な、汗まみれの恰好をしているものなどいやしない。

しかし、さきほど提唱した我々のプリミティブ・マインドはもはやそのような「恥じ」や「面目」を気にしないわけで、周りにいた人たちは明らかに我々を「うわ！！何？この人たち・・・」といった顔でチラチラ見ていたが、これといって苦痛には感じなかった。

プリミティブ・マインド万歳！！

とそこへ、一人の女性がＫさんのもとへやってくる。

お？なんだなんだ？と思いつつ、とりあえず対女性向けのダンディ、かつニヒルないつものＫさんを取り繕う。やはり重要なのは「純心」ではなく「リビドー」であるといったところか。

さらばプリミティブ・マインド。永遠に・・・

女性の第一声

「あの～今大学の研究の調査でアンケート取らせて頂いているのですが、お時間いただけませんか？」

その少しためらうような、恥じらいを感じさせる表情・・・おしとやかな服装・・・知性を感じさせる言葉遣い・・・

う～んいずれをとっても・・・・

「満点！！」

「満点！！」

「満点！！」

「満点！！」

お～っとぉぉ！！吉村審査員から満点が出ました～～！！！

いやあ・・・君のような素敵なレイデーのお誘いを無下に断ることなんてできると思ったのかい？baby・・・

さあ勇気を出して、この僕に何でも聞いてごらん。

この女学生、申し訳なさ気にアンケートを開始する。

清楚な女学生。方やボロ雑巾のような服装の男。

今この誰が見ても異質な２人が一つの目標へ向けて進みだそうとしている。

そんな緊張感の中、女学生が口を開く・・・

女　「こ・・・・」

Ｋ　「こ・・・？」

女　「国内便をご利用ですか？それとも国際便をご利用ですか？」

・・・・

おい・・・嬢ちゃん・・・俺たちゃこんなみすぼらしい恰好して、一体どこへ行けばいいのかね？

・・・・

結局泣きながら「すみません。休憩しているだけなので。」と答えると、けっ貧乏人が、といった表情で唾を吐き捨て、彼女は去っていった・・・。

ああ・・・リビドー・・・・性的衝動とはこれほどまでに人を傷つけるものか・・・

⑥お釈迦様の手の平で