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「う」の恐怖



最近僕がいたった見解として、どうも「う」という母音はよろしくない。「あいえお」という母音陣のポジティブさに比べて、「う」は妙に暗いやつだからである。

各母音が独立して用いられるケースを見てみると、「う」がいかに根暗なやつかが明らかとなる。以下は実例。

「あ」は発想と納得。何かに気づいて「あっ」、それに激しく納得して「ああ!」

「い」は驚きと肯定。単なる幼馴染と思っていた子から愛の告白をされて「いっ」と固まり、だけどよく考えたらあいつ「いい」女だよな。

「え」は歓喜の驚きと同意。買ってた宝くじと当選番号が同じで「え!」。換金は銀行振り込みでいいですか、と問われて「ええ」と同意。

「お」は発見と興奮。道端にエロ本が落ちているのを見つけて「おっ」。よくよく見ると、ネット上で高値で取引されている本であることがわかり「おお!」

と、このように「あいえお」という母音は明るい。非常に肯定的なのだ。

これらに対し、「う」のやつは本当に暗い。

「う」

朝からどうも血圧が高い気がする。少し気になりつつも味の無い朝のパンを無理にミルクで流し込んでは、いつものように満員電車に揺られ、ロンドン橋を自分の足先だけを眺めながら渡り、丘を登り九時の鐘を鳴らす聖堂へとぞろぞろと流れていく。そんな折、心臓のあたりが突然固まったようになる。動かない。「うっううっ」。

暗い。暗すぎる。
このように他の母音に対し、「う」はあきれるほど暗いのである。



この「う」の暗さは以下の言葉に集約されているといえる。

「鬱」

驚くべきことに、この「うつ」という言葉は、この根暗母音「う」が二つも連なってできている。言葉のさす意味自体非常に暗いものであるが、実のところ、この言葉のもつ響きが大変暗いのだ。

実際、「あー今日はなんだか鬱だなあ」などと思うと、すでにひどい憂鬱であるにも関わらず、その言葉の響きとの負の相乗効果ともいうべきものに襲われ、あーもう俺はだめだ、と落胆するにいたる気がする。

そこで、僕は金輪際「うつ」という言葉を使うまいと思うのだ。

かわりにあのひどく憂鬱な状態を、今後は「ぽっこり」と呼ぼうと思う。これは真剣だ。



「あー欝だ」といった場合の言葉のもつ鬱蒼とした陰鬱さは明らかで、僕らはさらに鬱々とした気持ちに追い込まれる。しかし「あー今日はぽっこりだな」なんて感じても、ま、いっか、とライトに感じ取れそうではないか。



ところで、いろいろと「う」について考えていると、母音が「う」行のみで、しかもそれが七つも続くという恐ろしい言葉を見つけた。あまりにも恐ろしい言葉なので、気の小さい人、心臓の弱い人、ならびに気の小さい人、気の小さい人などはここから下をくれぐれも見ないでほしい。

僕が今のところ考えうる限りでの、「う」の真髄を体現した言葉である。

「空中浮遊」