
幸せぶりっ子
私はよく人から、不幸そう不幸そうと言われるのだけど、当人に関して言うと実はそれほどそう感じているわけでもない。
恵まれた環境にいられて、あたしとっても幸せだわん。
しかし何故か人は私に「不幸な人」であることを求めるのである。
なんでだろうなんでだろう。
鏡を見ても、おっとこ前が映るばかりで、実に幸せに満ちた様子。
服装が駄目か。髪型か。それとも靴の底が擦り切れてるのがまずいのだろうか。
どうにも私には分かりかねるので、思い切って私を「不幸そう」と呼ぶ方に聞いてみたところ、「負のオーラがムンムン出てるからね」との有難いお言葉を頂戴した。
なるほど、負のオーラが出ているのでは仕方がない。さらにムンムンと出ているのであれば、最早諦める意外仕様がない。
ああそうか、負のオーラの仕業だったとはね。どうりでどうりで。
で、負のオーラとは何ぞや。
どこから出とんじゃい、それは。
脇か、口か。おう言ってみい。
正直なところ、周りの奴らから勝手にそのような得体の知れない負のオーラとやらを感じ取られた上に、不幸のレッテルを貼られたのでは、たまらない。
温厚で有名な私も怒り心頭。殴る蹴るのってえもんである。
んで、しかし数少ない友人様から頂いた有難き言葉なもので、これ以上友達減らすわけにもいかんから、一度真摯な姿勢で受け止めて、しかとそれを考察してみようや、ということで、私考えた。
悶々と鬱蒼と考えたのだ。
最近というもの必至こいて元気に振舞っていたつもりなのだが、やっぱり寝起きのテンションの低さがまずいのかしら。それともあれか、猫背だからか。だったらテレフォンショッピングで矯正下着買おうかしら。あれだったらついでにダイエット用の腰振るやつも買おうかしら。あのウォーキングシューズも結構いいんだとか。なんせ今の時代ウォーキングがトレンディーらしいからなあ。あれでなんか骨の具合とかも良くなるっていうし。おっといかんいかん、ベクトルが明後日の方を向いてしまったじゃなか。負のオーラ負のオーラ・・・
なんてやっておったら、はっと気づいた。
私ようやく気が付いたのだ。
今物思いにふけりながらボケっとしているこの私。鏡を介してみればなんとも男前。
いや違うあれだ、出とるのだ。周りにもやもやと。
そうこれぞまさしく負のオーラ。
つまり私が真剣な表情で考え事をしていると、男前には違いないが、同時に負のオーラがムンムンと発せられるということなのである。
しまった。今の今まで気づかなかった。
どうりで、なんか道行く人たちが私を避けて通ることが多いなあと前前から思っておったのだ。
私からはこれほどまでに負のオーラがムンムンと出ておったのだ。
で、如何せん。どうしたらこの悪状況から脱することが出きるものなのか、と考えるに、ようはボウっとしとる時にしとる顔がマイナスムンムンフェイスなわけで、すなわち普段の顔がなんとも根暗を演出しとるというこつなんである。
ってことはだ、鏡を意図して見とる時の私というのは、お目々キラキラさして、麗しきスマイルを演出しとるから気づかんかっただけで、日ごろの私の顔とはこれほどに鬱蒼としとったんである。
ってことは、つまり日ごろから常に一人でおる時も、幸せぶりっこで、さも楽しげにしておったら万事解決なんじゃないか。
日ごろからの鍛錬で、いつも終日ニコニコしておったらいいのではないか。
そいで颯爽と歩きましたところ、「まあ素敵な幸福男だよ」などと噂されるという寸法なわけだ。
もう不幸とは呼ばれまい。
てことで、今晩の飯はおでんになったわけだ。
おでんと言えば、家族や恋人とアハハウフフと言いながらつつくもんであって、一人身の私には到底食えた代物ではないのだけれど、先の決心がございますので、思い切って今宵の飯は一人でも楽しくおでんを食うのだ。アハハ。
手持ちの金がなかったから、練り物系が買えず、大根・こんにゃく・たまごと、まるで大根の煮付けの匂いが漂うけれど、いんやこれでいいのである。ウフフ
あー!本当!幸せだなあ!
楽しいなあ!!
アイムソーハッピー!