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魚類は呼ぶよ
2008年5月4日の日記より



今日は下関の水族館(海響館)へ行ってきた。これでここ2、3年の間に10回ほどは水族館に行ったことになるのではないか。

海響館では、ゴールデンウィークの間「夜の水族館」という企画が行われているらしい。
普段入園料で1800円もするところを半額の900円で入園できる

水族館フリークの僕としては、これは見逃せない、ということでいそいそと出かけることになった。

(ちなみに「夜の水族館」だからといって、半裸の鯛や平目がポールに体をこすり付けるようなショーをやっているような場所ではないんだぞ。これはお兄さんが約束するぞ。)

この「夜の水族館」は、18:00〜21:00の間開園しており、普段(18:00まで)では見ることのできない魚たちの姿を見ることができる。イルカのショーもサボることなく開かれている。 お勧めだ。

何より安いし。



ところで、僕が水族館好きになったのには、ある魚の存在が関係している。

ピラルクというアマゾンに生息する巨大な魚だ。
こいつの存在感というのが強烈で、一目でファンになってしまった。

その容貌はシーラカンスとよく似ている。同じ古代魚なので当たり前といえば当たり前だけど。こぶしほどもある大きさの鱗に全身を覆われ、水の中を悠々と泳ぐ。

このピラルクが偉いのがその大きさで、成長すると最長で4mにもなるというところだ。
これは、成人男性が縦に並んで二人半分、ビルの高さでいうと二階の天井に至らんという大きさだ。とにかくでかい。

海の懐は僕らの想像を超えるほどに深い。
しかし逆説的ではあるが、このような海の認識は僕らの共通認識となっている。
つまり、多くの人が、海はクジラやマンボウのようなとんでもないのを内包してるんだから、いまさら何が出ようが驚かんぞ、という認識を持っているのだ。

当然僕もそのような認識を持っていて、何mの巨大なやつが海に生息していようがことさら感動はしない。

しかし、ピラルクは別なのだ。
なぜならば、ピラルクはアマゾンに生息する、つまり淡水魚(川魚)だからだ。

例えばこのような光景を想像してみてほしい。

ジャングルの奥地。薄暗い森の中を手探りで進んでいる。
行く手をさえぎる木の枝や草の葉。それらを手で交わしながら歩みを進める。
すると、突然視界が開ける。
そこには川が流れており、その川の周囲だけジャングルが途切れていたのだ。
そこで少しばかり休憩しようと思いたち、川辺に腰を下ろす。顔でも洗うかと水面に手を伸ばす。

すると、何かが水の中をゆらりとうごめく。
それは黒い巨大な、数メートルもあろうかという「何か」の影なのだ。

アマゾンという時点でアンリアルではあるが、淡水魚であるピラルクとは、実際にこのような出会いが現実として起こりうるのだ。

僕はこの光景をまじまじと想像し、ぞっとした。
このぞっとした感覚は嫌悪感からくるものではない。
むしろある神秘に対する畏敬の念に近い。



ピラルクに一目で惚れて以来、幾度となく足しげく水族館へ通いつめた僕であるが、最近ある出来事があって、ピラルク熱は多少冷めた感がある。(というのも先日友人から「アマゾン川はK君が思っているほど小さな川じゃないよ。実際には向こう岸が見えないほどでかいんだよ。そしてピラルクはジャングルの奥地の小さな川ではなくてそのひろーいところに生息してるんだよ」といった心無いことを言われ、僕の幻想ははかなくも散ってしまったのだ。うおぉぉぉん)

その代わりに、といっては何であるが、最近僕の中でヌタウナギ(メクラウナギ)が少しずつ熱を帯びてきている。いまだに現物はお目にかかったことがないけれど、ぜひ一度見てみたい魚だ。

このヌタウナギは、ウナギというだけあって魚なのだけれども、生物学上の分類を見ると、円口類に属する。

つまり分類上は、釣りの際の餌として馴染み深いイソメやゴカイ(ムカデに似たあのウネウネして気持ち悪いやつ)と同じ分類になるのだ。

よくよく考えてみると、ウナギという魚自体、魚としては危ういところがある。
というよりも、あれは、本当に魚なのかよくわからない。
生物学上の分類では魚類となっているけど、それはあくまで生物学上の話であり、実際のところあの生物は魚と呼ばれている一連のあれらよりも、むしろ蛇に近いといわれたほうが納得がいくのではなかろうか。

そもそもウナギ自体そんな調子なのだ。
その上ヌタウナギの場合、口の特徴が明らかに魚類のそれを逸脱している。

どうしても特定できない不安。何なんだヌタウナギ。

この気味の悪さが逆に魅力となり、最近は図書館の図鑑でしげしげヌタウナギの項を眺めニヤニヤしたりしている。

ちなみに、ヌタウナギの捕食の仕方はすごい。
その特徴となる口は、わかりやすくいうと、トイレ掃除に使うスッポンの「すっぽんっ」とするところの形のようになっている。ただしそのスッポン面の一面にずらっと鋭利な歯が並んでいる。 ヌタウナギは、弱った魚やその死骸を見つけると、頭からそれに突っ込みスッポンの口を・・・

ダメだ。これ以上はすごすぎて書けない。



ところで、先日テレビで深海の様子を見ていて驚いたことがあった。

深海では光が届かないため、自ら発光する生物が多いのだという。

その生物たちが発光して深海を漂う様子を収めた映像がしばらく流れているのを見て、僕はとても不思議な気持ちになった。

地球の中心へと下って撮影されたはずの映像なのに、その光景はまるで宇宙。無限に続く星空がそこには広がっていたのだ。

すると、その発光する生物の中に、同様に発光するイカ(だったと思う)が映し出された。
そのイカの甲の部分を見て僕はさらにぎょっとした。
それが、近年宇宙人として一般的にイメージされるようになった「グレイ」にあまりにもそっくりだったからだ。

そういえば、昔の宇宙人の定番といえば、例の「火星人」像だった。
その姿はタコを模して描かれていた。

この深海の映像を見て、人間宇宙という未知の空間を想像するとき、無意識的に自分よりも下に広がる世界、すなわち海の中にその雛形を求めているのかもしれない、などと考えさせられた。

そんなことを考えさせる海は、本当にどこまでも「深い」。