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サイエンスフィクション



 光りの速さを越えると過去へタイムスリップできる、というはなしを初めて耳にしたのはたぶん10代の頃だ。しかし当時から今に至るまで、僕にはこの理屈がどうにも納得できなかった。
 というのも、主観者Aがいくら早く動いたからといって、時間に変動をきたすとはとても思えなかったからだ。

 たとえばこのAが、B地点を出発して、0.1秒後に地球を一周してB地点に戻ってきたとする。
 ここに時間を逆行する要因があるだろうか。
 なるほどたしかにそれだけ早く動くことができるものにとって、世界一般の動作はほぼ止まっているも同然なのかもしれない。しかし限りなく止まって見えたからといって、時間の流れに影響を与えたことにはならないし、ましてや逆行していることには絶対にならないじゃないか。
 仮にどうしても逆行するというのなら、そこには「光りの早さを越えると時空に歪みが生じて…」といったSF的な要因が含まれるにちがいない。

 と、このように考えてから十数年、僕は光とタイムスリップのはなしを曖昧なままに放置してしまってきた。それはそれは気持ちの悪いサスペンスだった。

 ところが今日物思いに耽っていて、突如驚きの発想をえた。
 たしかに過去へタイムスリップできることに気が付いたのだ。
 もっとも厳密にいえば、光の速さを越えれば過去を見ることができる、ということになるのだけど。

 たとえば、今僕が、あの国民的ギャグ「あるある探険隊」をやっていて、それを友人Aが見ているとする。そして「あるある探険隊!」とキメのポーズをした瞬間、Aが僕を見ながら後方へ光の早さで移動し始めたとする。
 するとどうなるか、ということなのだ。

 ここで共通認識として理解していてほしいのが、僕らが見ている映像は物体に反射した光であって、目の前の机でさえ無限分の一秒遅れて見えているということだ。
 つまり僕らが見ている全ては、過去に何かしらに反射した光ということになる。

 さて先の話に戻るけど、キメのポーズをした僕に反射した光は、光の早さで僕から離れていく。この僕から離れるキメのポーズを映した光の位置をBとする。
 そして友人Aは「隊!」のタイミングで、光の早さで後に移動し始める。
 するとどうなるかというと、Aは移動する光の地点Bに常にい続けることになるのだ。つまり、Aにはキメのポーズをした僕が静止した映像として見え続けることになるのだ。

 では、Aがさらに速度をあげて光より速く移動するとどうなるか。つまりAがB地点を追い抜いてしまったらどうなるか。
 ここがネックなのだ。
 というのも、そこには過去を映した光が連綿と連なっているはずだから。
 Aは、ビデオのまき戻しの要領で、逆向きに行進して「っいはぅいはぅいはぅ、いはぅ、いはぅ」とやる僕の姿を見るはずだ。
 つまりAは「今」を追い越してさらにその先にある過去に追い付くことになるのだ。とても不思議な言い方だけど。

   このように、たしかに光の速度を超えると、過ぎ去ってしまったはずの映像を見ることができる。あるいはその世界にいることができる、といってもいいかもしれない。あとはそこで見えたものを「今ある」と定義するかどうかの問題で、それをさておきすれば、たしかにこの方法で過去にタイムスリップできるといえそうだ。

 しかし残念なことに、アインシュタインの相対性理論において、物体が光の速度を越ええないことをはすでに証明されているらしい。
 つまり過去にタイムスリップするのは理屈としては成り立つが、やはりSFのFの壁を越えられないらしい。

 その不可能性はある数式によって表されるらしいのだけど、僕にはさっぱり理解できそうにない。
 ただし、「納得できない」のと「理解できない」のは全く別のもの。
 苦節十数年。ようやくタイムスリップの呪縛から開放され大変すっきりした。



後日確認したところ、やはり「早く動くと時間は縮む」というのが正しいのだそうです。
僕にはわけが分かりません。
むしろみんなが集団催眠にかかっているのではないでしょうか。